【企業型DCと退職金制度】退職金制度の種類と導入・活用のポイントをわかりやすく解説

企業型DC(確定拠出年金)とは、退職金制度の一つとして注目をされ始めている福利厚生制度です。退職金制度は一般的に長期雇用や離職防止のために導入される福利厚生制度です。

企業型DCをうまく活用すると、他の退職金制度よりも会社にとってのコストを抑えて導入・運用することができるのが特徴です。

ここでは、企業型DCと退職金制度の基礎知識、退職金制度の導入方法や活用のポイントについて解説していきます。

目次

┃企業型DCの基礎知識と退職金制度の種類とは

○企業型DCとは

企業型DC(確定拠出年金)は、税制優遇なども受けられるいわゆる自分年金です。二階建てといわれる公的年金制度(国民年金・厚生年金保険)と合わせて三階建て部分にあたるのが企業型DCです。

少子高齢化の影響で人材不足が進み採用が難しくなっている今、定着率アップと採用時のアピール材料として導入を検討する会社が増えています。企業型DCは、企業型確定拠出年金、企業型401k、日本版401kなどとも呼ばれています。

会社として企業型DCを導入する場合、定着率アップと採用時のアピール材料など社員にとっての福利厚生になるだけでなく、経営者自身にとっても大きなメリットがあります。

株式や投資信託などで運用を行っていくことになりますが、例えば今、iDeCo(個人型確定拠出年金)を活用している人にとっては企業型DCに切り替えた方がメリットが大きくなる可能性があります。

企業型DCで運用をすると個人型よりも多く税制面や社会保険料の面で優遇を受けることが可能です。資産運用の種類としては他にもNISA(少額投資非課税制度)などがありますが複数の方法で運用を行うことはリスク分散の意味でも有効です。

様々ある資産運用の方法の中でも企業型DCは、経営者自身、会社、社員の三者がそれぞれメリットを感じることができるでしょう。現在の日本の税制や社会保険制度においては、国民の負担が年々増加しており、お金が貯めにくいのが現実です。

少子高齢化の影響で今後も年金給付や医療費、介護費などの国の支出が増大していくことを考えるとこの流れが変わることは考えにくいとえいます。そうした状況の中、国は国民の一人一人の自助努力によって老後資金を蓄えることを求めており、そのための施策の一つが企業型DCなのです。

【税金と社会保険料】

○企業型DC以外の退職金制度

企業型DCは退職金制度の一つとしてとして導入・運用されることが増えていますが、退職金制度の運用方法は他にもあります。既になにか退職金制度を導入している会社もあるかと思いますが、企業型DCは他の制度と併用することもできます。

企業型DC以外の退職金制度としては、内部留保、中小企業退職金共済制度(中退共)、生命保険で準備する方法が考えられます。

どれか一つを選ばないといけないということはありませんから、それぞれのメリットやデメリットを理解して退職金制度の導入方法を検討していきましょう。

それぞれの制度の概要は次の通りです。

  • 内部留保・・・・・利益の一部を退職金として積み立てていく方法
  • 中退共・・・・・・国が助成する中小企業退職金共済に積み立てる方法
  • 生命保険・・・・・社員に生命保険を掛けて退職金時に解約して退職金とする方法
  • 企業型DC・・・・運用方法は様々。会社の持ち出し無く退職金制度を運用することも可

○企業型DCが中小企業の退職金制度に最適な理由

退職金制度は、複数の制度を併用することができるとお伝えしましたがその中に組み入れて欲しいのが企業型DCです。

企業型DCは、「貯蓄から投資へ」の号令のもと国が積極的に進めている制度です。国民が活用するメリットを感じられるよう税制優遇措置を受けられる制度になっています。企業型DCは、掛金拠出時、運用時、受取時の全ての場面で税制優遇を受けることができます。

企業型DCは元本確保型の金融商品での資産運用も可能ですが元本保証型であったとしても、税制優遇を受けられる分、個人で貯蓄をするよりも手元に多く資産が残ることになると考えられます。また、通常であれば退職金制度を導入するということで会社は、将来の退職金を支払うことを社員に約束することになるので潜在的な退職金債務が発生しますが、この部分についても企業型DCであれば、会社の支出を伴うことなく退職金制度を導入することもできるのです。

→【企業型DC(確定拠出年金)とは】制度の概要と特徴、個人型(ideco)とのちがいをわかりやすく解説

┃企業型DCの受け取り方

企業型DCで積み立てを行う主な目的は老後資金の確保です。長期的に資産運用を行い退職後に年金や一時金として受給するのが基本的な受給方法です。

何歳からでも積み立ては始められますが60歳から老齢給付を受給したい場合には、60歳までに積立期間が10年以上ある必要があります。

積み立て開始時期が遅かったり50歳を過ぎてから制度導入をしたりした場合で、60歳までの積立期間が10年に満たない人は、積立期間に応じた年齢から受け取ることができます。

60歳以降に初めて企業型DCに加入した人でも加入日より5年経過した日から受け取れますから、定年退職が無い経営者であれば何歳から加入してもメリットを感じることができるでしょう。

【選択制確定拠出年金の受給年齢】

企業型DCの受給方法は概ね、公的年金制度と同様です。老齢給付の他にも障害給付、死亡一時金があり、拠出した掛け金が掛け捨てになることはありません。また、やむを得ない事情で運用開始後に脱退する場合には、一定の条件の元に脱退一時金を受給できます。

【企業型DCの給付の種類】

┃企業型DCと転職時の移管・ポータビリティ

企業型DCの特徴の一つは、年金資産の持ち運び(ポータビリティ)が可能であるということです。転職してきた人が前の職場で確定給付企業年金(DB)を運用していたり、新たに採用した人が個人で個人型確定拠出年金(iDeCo)を運用していたりする場合、その年金資産を会社で運用している企業型DCに移管することができます。

今後、就職者や転職者から年金資産の移管ができるかどうか聞かれることが増えることも予想されますから、会社としても受け入れ態勢を整えておくことが重要です。

┃退職金制度のメリットとデメリット

企業型DCを退職金制度の一つとして考えるときにはメリットと合わせてデメリットもあることを理解しておく必要があります。退職金制度は、長期に渡って運用していく制度ですからメリット・デメリットを考えた上で導入するようにしましょう。

主な退職金制度の導入方法としては次のようなものがあります。

内部留保で退職金制度を運用する

◎メリット
・内部の資産として積み立てるので必要な時に使える余地がある

×デメリット
・将来の退職者を予測して必要な金額を留保するのが難しい
・予測よりも退職者が増えた場合に人件費が増大する

中小企業退職金共済制度(中退共)で退職金制度を運用する

◎メリット
・掛け金の全額が損金として処理できる
・社員ごとに掛け金を変えることができる

×デメリット
・拠出した掛け金は原則として社員のものとなる
・解雇事由に該当した社員に対しても掛け金に応じた金額が支払われる
・懲戒解雇した場合でも会社に掛け金が戻ってくることはない
・運用利回りが高くない

生命保険で退職金制度を運用する

◎メリット
・掛け金の一部を損金として処理できる(保険商品によって異なる)
・掛け金を拠出した後も会社の資産として留保できる
・必要なときには生命保険を担保に貸し付けを受けられる場合がある
・生命保険の解約返戻金を上限に退職金の支払額は会社で設定できる。

×デメリット
・一定の要件に該当した場合、一律で生命保険に加入する必要がある
(「在籍1年以上の正社員」など)

※生命保険については、商品によって異なることがあります。

企業型DCで退職金制度を運用する

◎メリット
・様々な税制優遇措置がある
・会社の人件費を増加させることなく退職金制度を導入できる
・運用成績によっては年金資産が増える

×デメリット
・投資運用リスクを加入者(社員)が負うことになる
・原則60歳まで資金の引き出しができない
・運用成績によっては年金資産が減る

退職金制度の目的である採用時のアピール、離職防止、退職時の慰労、ということを考えるとある程度の金額を準備しないと意味がありません。

しかし、多くの退職金を準備しようとすると会社の人件費も増大してしまいます。そうしたことを考えると、企業型DCと生命保険の組み合わせで運用するのが一番良いのではないかと考えています。

【企業型DCメリット・デメリット】

┃退職金制度の活用方法

ここまで退職金制度の導入方法として、企業型DC、内部留保、中小企業退職金共済制度(中退共)、生命保険という4つの制度を紹介してきました。

退職金制度の主な目的は、採用時のアピール、離職防止、退職時の慰労ですがもう一つ、効果的な活用方法があります。それは、「退職の申し出を早めにしてもらい」「引き継ぎや人員補充を円滑にする」ために効果的で、急な退職の申し出が多いという課題を抱えている会社には特にメリットが大きいでしょう。

一般的な就業規則では、退職の申し出について次のように規定しているとことが多いです。

第○条 退職
自己都合で退職する社員は、退職日の●箇月前までに会社に退職届を届け出るものとする。

しかし、「●箇月」を2箇月や3箇月としていても実際には、直前の退職の申し出があったり、最後の1箇月を年次有給休暇の消化に充てられたりするなどその規定の役目を果たしていないことの方が多いです。

さらに労働者向けの情報が掲載されたホームページ等では、「民法上、2週間前に会社に言えば退職できる」といったことも記載されていることもあって、就業規則が効力を失っていることも多いです。

そのような状況に対して、退職金制度や退職時の一時金制を導入することで就業規則に実行力を与えることができるのです。

例えば、退職の申し出の時期に応じて退職一時金を変動させることが考えられます。

  • ① 退職日の6箇月前までに届け出をした場合・・・・・・60万円
  • ② 退職日の3箇月前までに届け出をした場合・・・・・・30万円
  • ③ 退職日の1箇月前までに届け出をした場合・・・・・・10万円
  • ④ 届け出をした日から退職日までが31日未満の場合・・・支給無し

といった規定にすれば「できる限り早めに退職届を出してもらう」ように促すこともできます。

別で退職金制度がある会社であれば、その支給率を変動させる方法も考えられます。

この制度については、企業型DCでは運用できなので内部留保や生命保険で運用することになるでしょう。

→社長一人法人からでも入れる企業型DCのご案内はこちら

┃まとめ

ここでは、企業型DCと退職金制度の基礎知識、退職金制度の導入方法や活用のポイントについて解説してきました。

少子高齢化、人材不足が進む中、退職金制度は求められる制度になっていくでしょう。

社員のためになるのはもちろん、会社や経営者自身にも大きなメリットがある企業型DCの導入をぜひ、ご検討ください。

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